たゆたふままに

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「未闘病記」     笙野頼子

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笙野頼子さんといえば、猫たちのために千葉に引っ越した作家さん、ということだけしか知らなかった。本を読んだのは初めてで、一番の感想は、独特だ、文体が、語り口が・・・。-膠原病、混合性結合組織病の笙野頼子-と診断されるまでの長期にわたる具合の悪さや、投薬で、初めて普通の体の状態を知ったことと、それに関わるもろもろのことが綴られている。この病は原因不明の難病であり症状が一人一人違うため、先のことは分からないし誤解も受けやすいという。ならばこう考えよう、その日楽しいことは未来永劫絶対に破れないのだから、それは金剛石のような財産になる、と。そして、その財産を大切にしようとは書いていないけれど、たぶんそういうことだ。明日は分からない。元気いっぱいの人にも誰にも分からない。だから・・・なのである。

よく分からなかった膠原病という病についても少し理解が深まった。




画像は2015.1.6.埼玉県さいたま市にて、
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by yuhu811 | 2015-02-06 10:34 | Comments(0)

熱狂なきファシズム-日本の無関心を観察する-   想田和弘

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観察映画作家である想田和弘氏が、1999年から2014年にかけて、様々な場面で綴ったものを収めたもの。日本国憲法や政治のこと、観察というドキュメンタリー映画のこと、芸術とはなんだろう、ということが語られている。

想田氏の観察映画は見たことがないのだけれど、観察映画というものは、たぶん見たことがある。観察映画には、きちんとしたあらすじがあるわけではなくて、なにかしらの答えが示されるものでもない。ナレーションもドラマチックなシーンもなくて、初めて見たときはあれれ?えぇー・・・・と・・・・という感じ。慣れないと、なんだかなー・・・だけれど、観客も観察に参加するという映画なのである。で、このタイトルはといえば、著者が観察を続ける中で感じているこのところの日本についてであろう。特に日本国憲法の改憲についての危機が伝わってくる。恥ずかしいことだけれど、日本国憲法をきちんと読んだことはなく、それを作った詳しい経緯も知らないのだけれど、ここにその手がかりが書かれていた。大きな戦争が終わり多くの人が死に、そして心から平和を願った時、「民主的な憲法を書こう」と理想に燃えた人たちいて、その人たちが作ったものなのだいう。その中には、戦前日本で過ごしたことがある、ベアテ・シロタ・ゴードンさんというユダヤ人の女性もいて、本の中で紹介されているいくつかの条文を読めば、これは"押しつけ"などではなく日本人への贈り物だった?男尊女卑からの解放でもあった?と考えている。ベアテ・シロタ・ゴードンさんの"1945年のクリスマス"も読んでみよう。




画像は、2015.1.6.埼玉県さいたま市にて、
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by yuhu811 | 2015-02-05 15:57 | Comments(0)

「梢にまだ陽のあるうちに」     坂口康

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帯に長編フィクションと書いてはあるのだが、自伝というかノンフィクションのようなお話。むかーし母がテレビの時代劇に映った隅田川を見て、「隅田川もずいぶんきれいになったわね~」なんて言って大笑いしたことがあったのだが、この本を読んでいると、「母に伝え聞いたことのある疎開とは、ずいぶん違うソカイもあったのねー」なんて感想を持ちながら、読後、「あれ、フィクションだった」と・・・・。しばし脳が混乱し、創作の隅田川映像を見ていた笑った母を思い出し、疎開を生きた人々とその時代を想像した。

主人公はヤスオ。ある日、ニューヨークのギャラリーで偶然目にした一枚の絵から、記憶がゆすぶられ遠い過去が呼び起されていく。疎開先での風景から始まる少年時代、大きな大きな木の記憶。そこに集う人々、出来事が描かれていく。そして徐々に心がゆすぶられた理由が分かってくる。創作とは思えない納得感、というか現実感あるものとして体に沁みこんできて、あぁ、長く生きていれば、こんなこともあるのかもしれない、あるんだなと思えてくる。ドラマチックなのに大げさでなく、味わい深く心に残る一冊。




画像は2014.10.30.東京都にて、
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by yuhu811 | 2014-11-11 18:14 | Comments(0)

「眠りの庭」     千草茜

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アカイツタ、イヌガン、の二話からなる物語。始まりは学園アニメ風なのだが、読み進んでいくうちにどろりとした色と匂いが満ちてきて、ゾクッとする。最後はやや不完全燃焼な気もするが、これが作者の狙いなのかもしれない。ホラーというのかミステリーというのか分からないけど面白い。




画像は2014.11.7.神奈川県にて、
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by yuhu811 | 2014-11-11 16:56 | Comments(0)

「暴露 スノーデンが私に託したファイル」   グレン・グリーンウォルト

田口俊樹・浜野大道・武藤陽性/訳
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国家安全保障局(NSA)と中央情報局(CIA)に籍を置いていたエドワード・スノーデンが持ち出した、アメリカの機密文書の内容と、スノーデンがなぜそのような行動に至ったか、について詳らかに書かれている。インターネット世代はもちろんのこと、ジャーナリストや個人情報を守らねばならない仕事についている人の必読書。
現在、ドイツとブラジルが主導する、トラフィックが合衆国を通過しない新たなインターネットのインフラを構築するという動きがある。また、多くのヨーロッパの企業が、情報をNSAに渡さないとしてメールやチャットのサービスを提供しているので、善い方向への変化を期待したい。




画像は、2014.10.7.埼玉県内にて、
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by yuhu811 | 2014-11-06 15:27 | Comments(2)

「世間のひと」    鬼海弘雄

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鬼海弘雄さんの最新刊。一般人のポートレイト集なのだけれど、一般人と一括りにしてしまうにはあまりに個性的な人たちばかりが続く。浅草に三十年以上通って撮り続けているので、数年後の○○さん・・・という写真もあり、かなり興味深い。ポートレイトの下には、その人についての一言が書かれていて、その人の生活や歩いてきた道、等々、想像が膨らみ、ウフフ、と声が漏れることもしばしばだ。そして、自分と同じようなことを言ってる人に出会うと、なんだか嬉しくなる。文庫本なので、いつでも気軽に、「こんにちは~」と、本の中の人々に会えるのもまた楽しい。今日は、生きたいように生きよ、と言っているような気がする。




画像は、またも鬼海弘雄さんとはまったく関係ないけれど・・・2014.10.21.東京都内にて、
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by yuhu811 | 2014-11-05 12:35 | Comments(0)

「東京夢譚」    鬼海弘雄

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半年ほど前、空中に浮かんでいる人の写真を目にした。下に川があり、その上に浮かんでる。インドのようだからガンガーか?なぜ空中に浮かんでる?と気になって、鬼海弘雄さんの写真展"INDIA 1982-2011"と講演会に出かけた。空中浮遊しているように見えたけど、謎はすぐに解けた。川に飛び込んでいるところだそうだ。インドでは、沐浴の時こんなふうに、よく飛び込むのだそうだ。知らなかったなー。写真展はインドの人々の美しい写真だった。話の中で、これはインドの報告ではなく人間を撮っている、ということを何度か繰り返された。鬼海氏曰く・・・人間の考えでは到底創りえない美しい瞬間や驚きを撮っている・・・・一枚の写真を何度見ても飽きないのは何故なのか・・・・、等々、面白いこと、意外なこと、頷くことをたくさん話していただいて、不確かだったものが頭の中で文字になり、そして心の中が潤った~。それで、いくつか本を読んでみようと思い立ち、手にした中の一冊がこの「東京夢譚」だ。

2007年初版の写真集で、三分の一ほどがエッセーになっている。ここには人は写っていない。人の匂いのする街角が納められている。写真とともに、写した場所と年代が書かれているので、故郷として記憶に残っている東京に、思いを馳せることができた。あーそうそう、こういうところあってねーって・・・。エッセーも、大切なことをいろいろ書かれていてすごく面白い!




画像は、2014.7.12.東京都にて、
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by yuhu811 | 2014-11-03 16:55 | Comments(0)

「櫛挽道守(くしひきちもり)」    木内昇

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櫛挽きの家に生まれたお登勢が後継ぎとして認められるまでの、長い長い月日を描いたもの。舞台は幕末の木曽で、女は嫁いで子を産むものという時代であった。が、諦めず、また幕末という激動の時代に振り回されずに生きていく。自分をみつめながら苦しい道を歩いていくことになるのだが、その過程で自分とは違った生き方や、理解できなかった人へも心を寄せることが出来るようになっていく。所々に描かれる、櫛挽きのリズムも心地よく、静かな感動を味わった。装丁もしっくりきた本。



画像は、2014.9.18.埼玉県にて、
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by yuhu811 | 2014-09-29 17:55 | Comments(4)

「永山則夫 封印された鑑定記録」    堀川恵子

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1968年(昭和43年)10月から11月にかけての26日という間に、4人が射殺されるという事件が起きた。その事件を起こしたのが当時19歳だった永山則夫である。永山は1997年に刑が執行された元死刑囚だが、遺留品の中に精神鑑定書が残されていた。それが、石川義博医師による精神鑑定で、裁判では採用されなかった鑑定書だった。その鑑定書を丁寧に紐解き、採用されなかった経緯とともに、なぜ?どうして刑を犯したのか?という疑問を探っていく。家族という密室の中で営まれるものや、同じ環境にいたとしても育まれるものは個々違ってくるわけ等々考えさせられる内容だ。また最近では裁判員制度の導入により、刑の厳罰化と執行が速まったと著者は言う。原因を丁寧に探らずに、ベルトコンベアのように処分してよいものなのだろうかという疑問を投げかけている。



画像は2014.7.29.神奈川県にて、
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by yuhu811 | 2014-09-29 17:15 | Comments(0)

「笑い三年、泣き三月」     木内昇

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戦後、焼け野原となった下町で、懸命に生きる人々を描いた物語。話は、上野駅のプラットホームに善造という男が下りたつところから始まる。そこに、活字中毒の笑わない孤児武雄、戦前映画を作っていたという男たち、さらに日を追って、踊り子が加わり、カメラマンだったという男が加わって物語は膨らんでいく。そういった大人たちとのかかわり合いの中で、やがて、武雄は自分の未来について考えることが出来るようになっていく。魂の再生というのかな。。。
また、ここに書いてしまうとお楽しみにならないので書かないが、映画を作っていた杉浦が言う、モノを作って広く社会に発表する人として考えるべきことや、写真について語るカメラマン大森の言葉や、武雄が善造を撮った時に思ったこと等々、心に響く台詞が多く、また読みたい本のひとつ。



画像は2014.9.12.埼玉県にて、ツユクサ
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by yuhu811 | 2014-09-21 16:58 | Comments(0)