たゆたふままに

「梢にまだ陽のあるうちに」     坂口康

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帯に長編フィクションと書いてはあるのだが、自伝というかノンフィクションのようなお話。むかーし母がテレビの時代劇に映った隅田川を見て、「隅田川もずいぶんきれいになったわね~」なんて言って大笑いしたことがあったのだが、この本を読んでいると、「母に伝え聞いたことのある疎開とは、ずいぶん違うソカイもあったのねー」なんて感想を持ちながら、読後、「あれ、フィクションだった」と・・・・。しばし脳が混乱し、創作の隅田川映像を見ていた笑った母を思い出し、疎開を生きた人々とその時代を想像した。

主人公はヤスオ。ある日、ニューヨークのギャラリーで偶然目にした一枚の絵から、記憶がゆすぶられ遠い過去が呼び起されていく。疎開先での風景から始まる少年時代、大きな大きな木の記憶。そこに集う人々、出来事が描かれていく。そして徐々に心がゆすぶられた理由が分かってくる。創作とは思えない納得感、というか現実感あるものとして体に沁みこんできて、あぁ、長く生きていれば、こんなこともあるのかもしれない、あるんだなと思えてくる。ドラマチックなのに大げさでなく、味わい深く心に残る一冊。




画像は2014.10.30.東京都にて、
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by yuhu811 | 2014-11-11 18:14 | Comments(0)