たゆたふままに

「怒る富士」 上・下   新田次郎

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以前、藤原ていの本を読んだときに夫である新田次郎の本を読んだことがないと気付き、正月にじっくり読んだ。今年の読み初め本。このところ何かと話題の多い富士山周辺が舞台である。ときは宝永四年(1707)、富士山の大噴火である。噴火は16日にわたって周辺に石が降り続けたという。その過酷な状況下で生きて行かなければならなかった農民たちの為に命をかけた、「関東郡代伊奈半左衛門忠順(ただのぶ)」という人物の物語である。物語は徳川実記を織り込みながら説得力を持って展開されていく。被災地のようすや、復興のために集められた金銭の行方、遅々として進まぬ復興、飢えて死んでいく人々、江戸での政権争いなど、現代日本の抱える問題がだぶるようで驚く。ひとつ違うことといえば、伊奈半左衛門のような人物が今の日本に見当たらないということかもしれない。また、富士山ろくが復興を遂げるまで、実に三十六年を要したことを考えれば、流通の発達した現代でも相当の覚悟が必要だということが分かる。自然災害のことをいつも考えながら暮らすのは難しいけれど、こういう国土なのだということを忘れてはいけないのだ、と思った。伊奈半左衛門の墓は埼玉県川口市の源長寺にあるという。お参りせねばなりませぬ。。。。

新田次郎は、あとがきで。。。。この小説の出来不出来は別として、ひどく手数が掛り疲労を覚えた小説だった。いい仕事をしたという満足感はあった。。。。。と記している。読み手も同じ感覚である。一読の価値ある本。昭和48年(1973年初版)




画像は2012.5.西湖いやしの里根場にて。。。。。ここは、昭和41年(1966)の台風災害で壊滅的被害を受けた根場地区の風景を、甦らせて2006年にオープンした施設です。
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by yuhu811 | 2013-05-10 15:33 | Comments(0)