たゆたふままに

「人質の朗読会」

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小川洋子さんの「人質の朗読会」を読んだ。人質という囚われの身である8人+ひとりが、人生を振り返りこころに止まったことを書き止めそれを朗読する、という形をとって9編が収めらている。その中にコンソメスープを作る場面があるのだが、それを観察する目と表現が秀逸で心地よい。言いたいけれど、感じているけれど、言葉に出来ない部分を丁寧に拾い上げて語り掛けてくれる。コンソメスープが五臓六腑に広がるように、暗闇で光を見つけたように、眠っていた部分を覚醒されていくような、快感の文章である。調理器具の下り、牛肉が登場してからの描写に魅了された。また、ハキリアリの潔さと美しさを忘れてはならないなと心に刻んだ。

それぞれまったく違う人生を歩いてきた老若男女だと思うのだが、語り口は一人のように響いてきた。人質になってかなりの月数が過ぎていたということ、翻訳者が介在しているという形をとっていること、だからなのかもしれないが。。。
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by yuhu811 | 2011-06-27 18:07